【レポート】下野市ツアー「笑い×地域の資源」で賑わいをつくる編 前半レポート

都市部に住みながら、継続的な地域との関わりを持つライフスタイルを提案している「はじまりのローカル コンパス」では、栃木県内各地で様々なツアーを開催しています。

下野市を舞台に開催されるフィールドワークは全部で2回。1回目は街のひと・もの・ことを知り、そこで出会った人たちと一緒に2回目に訪れた際にとある挑戦をします。

今回はそのうちの1回目、10/27~28に実施したツアーの内容をご紹介。
参加者はどんな体験をし、地域との関わりをもつ第一歩を踏み出したのでしょうか。

 

下野市の文脈を知り、人を知ると見えてくるものがある

ツアーの最初に参加者と向かったのが、古民家を改装したシェアスペース「夜明け前」。春になると桜祭りで多くの人が足を運ぶ「天平の丘公園」の敷地内にあります。

まずは参加者が1人ずつ自己紹介。どんな想いを持って参加をしているのかを、みんなでシェアしました。

参加者のなかには東京に近い場所で自分の第二の故郷を探しているという人や、栃木県出身で地元を出てしまったけれどもっと知りたくなってきたという人、自分の進路について考えたいという学生まで様々な想いを持つメンバーが集まりました。

その後は下野市の街の特徴についての紹介と、参加者を案内してくださる下野市で活動するコーディネーター「mosimo(もしも)」の皆さんそれぞれの取り組みについて話をうかがいました。

下野市は2006年に3つの町が合併してできた市です。3つの町にはそれぞれの歴史や文化があり、同じ市になった今でもそれぞれの名残は残っています。そんな環境を活かしながら、自分の好きなことやできることで活動をしているのがmosimoの方々です。

 

街のことを知り、その地域でチャレンジしている方々のことを知ると、街全体の動きを感じられてきます。知るだけではなく、さらにその仲間に混じる体験までするのがコンパスツアーの醍醐味です。

オリオンテーションの後には、当日開催していた「吉田村まつり」に参加しました。

 

吉田村まつりが創る空間を体感

吉田村まつりは、下野市の吉田村地区の「吉田農協跡地」で行われています。吉田村を誇りに思い、好きでいられる場所にしたいという願いを込めて企画されています。

大谷石でできた建物に囲まれた敷地内に、おしゃれな装飾が施されます。さらに終日アイリッシュ音楽が生演奏で流れているので、異国に来たような気分に。

出店されているお店は、栃木県内や周辺のお洒落な人気店ばかり。美味しいお料理をはじめ、コーヒーやお酒、採れたて野菜、陶器の食器、アクセサリーなど様々なものが売られています。

日も落ちてきたタイミングで、中央の演奏者を囲んでみんなで踊るのが、吉田村まつりならではの恒例。最初は少し照れがありながらも、次第に会場と一体感が生まれてみんな楽しんで踊っていました。

 

吉田村まつりは今回で5回目の開催となります。回を重ねるごとにスタッフとお客さんや、お客さん同士でのつながりがたくさん生まれているようです。この場にいることで、仲間意識を覚え、一体感を感じる。そんな空間づくりを体感できた時間でした。

 

その後、夜はシェアスペース「夜明け前」に戻って懇親会です。下野市で活躍されている方々をお呼びして、みんなで楽しい時間を過ごしました。

今後どんなことがやりたいの?なんて、自分の夢を語り合う場面も。普段自分が身を置いているコミュニティから外に出ると、新鮮なものの見方や刺激をもらえます。

 

宿泊先は、小金井駅の前にある「松葉屋旅館」。濃い1日を送ったので、旅館に着いたらあとは寝るだけ……というはずでしたが、とても親切な女将さんのお人柄に虜になるメンバーが多数。

「孫があなたたちくらいの年でね、孫を見ている気分なんだよ」

そう言って、本当のおばあちゃんのようにお世話をしてくれて2日目の朝の別れの時には、涙ぐむメンバーもいました。
こうして、思いもよらぬ出会いから戻ってきたい場所がまた1つ増えていきます。

子どもたちの可能性を広げる場「シモツケラボ」

2日目は「シモツケラボ」のお手伝いから始まりました。

シモツケラボは、子どもたちを対象にした理科実験やものづくり教室を企画しています。今回の内容は、市内で獣医をされている山崎さんをゲストに迎えてイカの解剖です。メンバーは、授業にも参加しつつ子どもたちのサポートにもまわっていきます。

シモツケラボの取り組みはオリエンテーションの時にも紹介があったのですが、当日参加している子どもたちが活き活きとしている様子を見て“百聞は一見に如かず”を身をもって感じさせてくれました。

この理科実験教室では、単に解剖を通して、イカの身体の構造がどうなっているかを教えるだけではなく、それを知ることによって何に繋がるのか本質的な部分にも触れていきます。

子どもたちの知的好奇心をくすぐり、いろいろなことに興味を持つ姿勢を育てることが本当の価値なのだということがわかりました。

シモツケラボのお手伝いをした後には、「産業祭」に参加します。

 

産業祭は、下野市の飲食店や商工業者が出店する露店がたくさん並ぶイベントです。地元の産業が集まる場で、いろいろなものや人との出会いを楽しみつつ、ただ参加するだけではなく遂行してほしいミッションが与えられました。それは、産業祭で出展されている食べ物を実際に食べて「食レポ」を動画で撮ってくることです。

くじ引きをして2人ずつのチームをつくり、食レポをする人とカメラマンをする人を分担していきました。

下野市の地元の産業に触れる「産業祭」

さて、現地に到着!

チームごとに分かれてミッションを遂行します。みんなどんな動画を撮影してくるのでしょうか。

撮影した動画は、mosimoの加藤さんが編集を担当してくださいます。次回のツアーでその全容が明らかに。

その後は、下野市で素晴らしい事業をされている事業者さんを訪ねるべく、介護付き有料老人ホーム「」へ伺いました。

 

高齢者と従業員の幸せにどこまでも寄り添う介護施設「新」

世間的な老人ホームや介護の現場のイメージは、あまり明るいものではないのが現状です。新はそんな介護の現場で、どこまでも高齢者の幸せを考えながらも従業員にも寄り添った介護を行っています。

 

施設の理念や、熱い想いがこもった仕事に、「下野市にこんなにすごい場所があったんだ……」と、メンバー一同引き込まれていきました。

 

施設の中は、各所に工夫が凝らされていてとても明るくて開放的。でも実は、他の建物には当たり前の設備や開放的なつくりでも、介護の現場だと「危険」とされてしまうことが多いらしいのです。そこでも新はその制限が本当に必要なのかを問い、ベストな選択を自分で判断します。

 

最後は、新の敷地内にあるカフェ「くりの実」で、今回の締めくくりをする時間を設けました。

下野市の街・人・取り組み・産業、などに触れた2日間でした。それらを振り返って、メンバーからはこんな声も出てきました。

「この2日間で、たくさんの出会いの機会をもらいました。次回はお客さんとして私たちを受け入れてくれるのではなくて、一緒に挑戦する仲間として考えてもらいたいです」

まさに、コンパスツアーが目指すのが実際に「仲間になる」というところ。
次回の再会までに、それぞれが決めた準備を行い当日に臨みます。


後半につづく

(文・写真 永井 彩華)