【レポート】下野市ツアー「笑い×地域の資源」で賑わいをつくる編 後半レポート

都市部に住みながら、継続的な地域との関わりを持つライフスタイルを提案している「はじまりのローカル コンパス」では、栃木県内各地で様々なツアーを開催しています。

下野市を舞台に開催されるフィールドワークは全部で2回。1回目は街のひと・もの・ことを知り、そこで出会った人たちと一緒に2回目に訪れた際にとある挑戦をします。

今回は下野市で開催された2回目のツアー内容をご紹介。下野市の地域コーディネーター「mosimo」の皆さんと一緒に、コンパス参加メンバーが一丸となってチャレンジした軌跡をレポートします。

 

 

子どもからお年寄りまで、一緒に楽しめる娯楽を下野市につくる

カメラに向かって「出発しますよ~」

この日の夜に開催される寄席「笑い場しもつけ」当日をmosimoの皆さんと共につくっていきます。リーダーは笑い場しもつけの主催である、永井塁さんです。

石橋駅に集合したメンバーは、永井さんのご両親が営むとんかつ定食屋さん「高砂食堂」に移動。こちらでまずは、永井さんから笑い場しもつけの開催の経緯や想いについて話を伺いました。

 

「笑い場しもつけ」は、子どもからお年寄りまで一緒に楽しめる娯楽を下野市につくりたい。という想いで月に1度開催されている寄席です。

これまで高砂食堂の2階で開催されてきたのですが、限られたスペースでお客さんがあまり入ることができないのと、段差が多くてお年寄りの方が来づらいという課題がありました。そんな時、ご縁があって近くのお寺「開雲寺」で定期的に開催できることになり、その移転初日の回をコンパスメンバーで手伝わせていただくことになりました。

 

前回、下野市を訪れてから1か月の間がありました。その間には、メンバーもそれぞれで今日に備えて動いていました。例えば、寄席はどういうものか都内で実際に見に行ったり、集客のためにSNSでの拡散を手伝ったり、ビラを置いてもらうために下野市をはじめとした栃木県内や都内の飲食店を奔走したメンバーも。

 

永井さんの想いを、みんなで力を合わせて実現していきます。

 

 

なぜ、売れるために自分の故郷を捨てないといけないの?

写真左:みんとんさん MLクリエーション代表

芸能事務所を経営し、お笑い芸人のマネジメントやお笑いライブを主催。人材派遣や番組制作なども行う。大阪と東京での二拠点生活を行っている。


その後、寄席の演出・監督を担当するみんとんさんも加わり、「2拠点居住」や「お笑いを地方でやる理由」をテーマにした話を伺いました。

 

「なぜ、芸人は売れるために、自分の故郷を捨てて東京に出ないといけないんだろう」。みんとんさんは、お笑い芸人のマネジメントの世界に入ってこんな違和感を覚えたと言います。東京には舞台もメディアも集まっているのは事実です。だからみんとんさん自身が、東京と大阪をはじめ日本中を飛び回り、場とメディアを、まだスポットが当たっていない芸人につなげる存在になりたいという想いを持って仕事をされています。

永井さん自身も、以前は東京を拠点にお笑い芸人をされていました。地元に芸人の活躍の場をつくりたいという想いもあり、笑い場しもつけを主催しています。2人の熱い想いが重なって実現した当日だということを、メンバー一同が感じた時間となりました。

 

トークセッションが終わった後は、寄席が開場した後の役割分担です。和やかなトークセッションとは一変、ぱりっとした空気が流れます。


メンバーは、受付や会場案内、楽屋で芸人さんや演者さんたちの誘導、めくり、車の誘導などを分担しました。そして、いよいよ開雲寺に移動して準備です。

 

これから、夕方からの本番に向けて、室内の内装・外の装飾・音響確認などなど、数時間かけてみんなで準備をしていきます。

 

さて始めるぞ、と意気込んだ時にmosimoの皆さんからメンバーへのサプライズがありました。

 

それは、オリジナルでつくってくださった手ぬぐいのプレゼント。「スタッフの目印に使ってください」と、加藤さんが笑顔で渡してくれました。


タオルの柄は、これまで下野市で出会った方々にゆかりのあるロゴが入っています。素敵な心遣いにほっこり。この場を成功させるぞーと、みんなで気合を入れて準備を進めます。

 

みんとんさんご指導のもと、楽屋に置くケータリングの準備。これがとても奥の深い仕事でした。

 

会場の窓枠のサイズに合わせられたロゴを切り取っています。装飾物は全て加藤さんの企画・デザインです。

 

会場の外観に、提灯やのぼりをたてて……

 

開雲寺の「笑い場しもつけ」バージョンの完成です。

 

 

超満員でスタートを切った、笑い場しもつけ@開雲寺

開場前から、入り口には長蛇の列。待ちきれない様子で並んでいるお客さんを見て、スタッフ間にも高揚感が。

 

こんな広い会場も……

 

あっという間に満員御礼。立ち見客が続出して、会場のキャパシティのぎりぎりまでお客さんで埋め尽くされていました。

 

場所を変え、回を重ねるごとにファンを増やしてきた「笑い場しもつけ」。永井さんの想いに共感した、日本各地の芸人さんや演者さん、クリエイターさんが巻き込まれてこの場が実現しました。

 

すごい熱量で先頭に立ち、人を巻き込み場をつくる。この動きができる人は地域にとって貴重で求められる存在なのかもしれません。

 

今回、コンパスのメンバーもその情熱に巻き込まれた一員です。「自分の想いに人を巻き込むって、こういうことなのですね」と話してくれたメンバーもいました。

 

プロジェクトを終えた後は、「ルッカ」で打ち上げ&懇親会です。mosimoのメンバーや、前回ゲストで来てくださった方、お店に偶然いらっしゃった方まで、たくさんの方とつながる機会となりました。

 

 

POKKEのホットサンドで1日がスタート!

2日目は、山口理貴さんが運営するシェアスペース「TSUBAKIYA(ツバキヤ)」でスタートします。

 

前日は、遅くまでおもいっきり飲んだり語ったりしたせいで、身体が重く感じるメンバーが続出した朝でした。でも、朝ごはんでフードトラック「POKKE(ポッケ)」のホットサンドとドリンクをいただいて、すっかり元気に。

 

フードトラックのPOKKEは、シモツケクリエイティブが仕掛けているプロジェクトのひとつです。イベントに出店する他にも、平日は住宅街で営業しています。

 

ここで、「障がい福祉」に関する活動をされている、山口さんと地域活動支援センターの山崎さんのトークセッション。

 

お2人が共通して考えているのが障がい者を、特別な存在という前提でみない環境をつくりたいという想いです。普段の取り組み、イベントでの活動を伺いました。

 

お昼は、野菜のてんぷらとお蕎麦をいただきました。美味しい野菜をつくっている農家の青柳さんと、人気のお蕎麦屋さん「蕎麦てとて」のにとりさん。

 

お蕎麦の上に下野市の名産のかんぴょうが乗っています。


午後は、これまでお世話になった施設にプレゼントするために、ふくべのランプシェードをつくりました。メンバー同士で協力し合って、2人で1つずつ作っていきます。

 

デザインや、穴の開け方はそれぞれの個性が出ています。

 

感謝の気持ちを込めて、夢中になってつくっていきました。

 

完成したのがこちら!

 

 

ツアーの集大成!感じたこと学んだことのシェア

コンパスの最後のプログラムは、ツアーを通じて感じたこと、これから挑戦したいことを発表します。1泊2日で2回、下野市に滞在してツアーがない間も情報に接する機会がそれぞれありました。


打ち解けたからこそ伝えられる、率直な気持ちを共有し合います。

 

メンバーからの感想を少しご紹介。

 

「行動することが1番大切だということを知りました。自分がやりたいことで行動して、みんなを笑顔にしたい」

 

「自分にとって心地良い、地域との関わり方が見つかった気がする」

 

「一歩を踏み出すのは怖いもの。今までなかなか行動ができなかったけれど、笑い場しもつけでやっと行動ができた」

 

「下野市では1人1人が主役で、時に1人1人が名脇役にもなる。このバランスがすごい」

 

みんなそれぞれ、これからどう地域と関わりたいかを画用紙に書いて、記念撮影。

 

最後は、mosimoの方々にもツアーを振り返って話をしていただきました。メンバーを受け入れる準備を、長期にわたって試行錯誤しながら進めてくれました。思わず、感極まる方も……。

 

mosimoは、これからも人と下野市をつなぐ活動を続けていきます。

 

これで、下野市のツアーは全日程が終了です。同じ時間を過ごしていても、心に残ったこと考えたことは人それぞれ違うことでしょう。


地域への関わり方に、共通の正解はありません。それぞれにぴったりの選択をするきっかけを提供するのがコンパスツアーです。


これからも継続的に、はじまりのローカルコンパスは地域との関わるきっかけをご提案していきます。

 

(文・写真 永井 彩華)