都市部に住みながら地方との関わる”キッカケ”を提供している「はじまりのローカル コンパス」では、10月から「ひととまちとつながる旅」と題したツアープログラムをスタートします。
それに先んじて、9月18日(月祝)に東京のコ・ワーキング&イベントラウンジ「EDITORY神保町」で、地域との関わり方を考える交流会を開催しました。
2017年のコンパスツアーの舞台となる「足利」と「那須」の両地域のナビゲーターに加え、元「ライフハッカー[日本版]」の編集長であり、新しい働き方・暮らし方を提案している「米田智彦さん」をスペシャルゲストに招いたイベントの模様をレポートします。
「移住は手段」失敗してもいい
「いきなり田舎に移住するのではなく、利便性のいい地方都市に住んでみては?」という提案で口火を切った米田さん。
「移住は幸福に生きるための手段のひとつなので、ゆっくりと地域との関わり方を探していけばいいと思う。何も考えずにとりあえず飛び込んで見るのもあり。そこで失敗しても意外となんとかなるものです。」
「栃木から東京へは2時間圏内で十分通勤できるので、東京の仕事をしながらでも栃木に住むことは可能。収入を落とさずに地方に移住するのも賢いやり方ではないかな。ポテンシャルを感じる土地です。」
移住のための4年計画
続いて「4年あればなんでもできる」と、実体験からの具体的な方法論についても話してくれました。
「1年目は調べる、2年目はボランティアやイベントに参加、3年目でアルバイトのような形で収入を得始め、4年目で暮らせる仕事を得る。この流れを意識すればどこへ行っても暮らしていけるでしょう。
土地に縁を結ぶということから始めて、少しずつ馴染んでいくこと。大事なことはその土地のキーパーソンを見つけることです。最近の移住者やバブル世代の移住民、それ以前の開拓者など、過去に移住してきた人の中にキーパーソンとなる人がいます。」
「どこから入っていいいかわからない人は、ゲストハウスに泊まってみるといいですよ。ゲストハウスは日本でも海外でもよそ者に優しい場所なので、受け入れてもらいやすいですし、相談にも乗ってもらいやすいです。人が集まるところからは新しいことがいろいろ生まれてきますので、面白い出会いがあるかもしれません。」
さらに、リモートワークが叫ばれるようになって、移住には追い風が吹いている昨今ですが、「リモートワークは魔法の杖じゃない」と苦言も。その土地に住むうえで、土地の人との対面のコミュニケーションが必要で、誰と何をするかがどこに住むか以上に重要だと教えてくれました。
移住の決め手は各々の感性
移住の決め手については、「その人の感性や、ピンと来る感覚を大事にしてほしい」とコメント。
「八重洲にある移住情報施設には47都道府県の棚があり、それぞれの呼び文句が書いてあるんですがどれも一緒なんです。自然があって、空気がきれいで、人が優しい、と、どこを見ても一緒(笑)。情報だけじゃ心は動きません。結局、大切なのは各々が感じる、土地に呼ばれている感なんです。」
米田さんの友人で長野県の軽井沢に移住した人の場合は、冬の雪が降った後、真っ白に染まった静けさが好きとのこと。最後は「個人の感性に合う土地であることが重要。自分の好きな場所を大切にしたほうが良いと思っています。」という結論で、移住・二拠点生活の指南についての話しを終えました。
イベントでは、米田さんも大事だと言っていた地域のキーパーソンによる、コンパスツアーの紹介の時間も設けられました。続いて足利の「柏瀬誠さん」と那須の「豊田彩乃さん」の両地域ナビゲーターのお話も紹介します。
足利は何でもできる街です
足利のコンパスツアーをナビゲートしてくれる柏瀬さんは、足利市役所の職員で現在は移住定住相談窓口を担当している、まさに移住のキーパーソンです。
元々栃木に住みながら東京へ通勤していた二拠点生活のパイオニアで、転職で市役所に勤めるようになってから、通勤に使っていた分の時間を活用し「あしかがまちなか探検隊!」をはじめとしたいろいろな活動を展開しています。
足利でのツアーテーマは「古民家を活かして小商いをやってみよう」。
「足利は古くからの織物の街であることや、足利学校があること、鎌倉時代の建物が残っていることなど歴史ある街です。古民家が並ぶ石畳の通りは懐かしさを感じさせる趣深い場所で、近くには花街もある楽しいところですよ。」
「ツアーの1回目では、足利のさまざまなところに足を運んで土地の魅力に触れてほしいと思っています。2回目では、ココ・ファーム・ワイナリーの収穫祭に合わせて行われるマルシェを舞台に小商いを行います。
足利の資源はいろいろ活用できるので、なにかやってみたいという人はどんどん相談してほしいですね。足利は懐の深い場所なので、やりたいことがあれば何でもできますよ。」
ゆるやか、おおらか、あたたかな町を感じてほしい
那須のコンパスツアーをナビゲートしてくれる豊田さんは、地域おこし協力隊として地域の人々との広いつながりをもつ、那須のキーパーソンです。
地域おこし協力隊の任期満了に伴って、ゲストハウスのオープンを予定しており、那須に新しい風を吹き込もうとしているこれからの人です。
那須のツアーテーマは「ゲストハウスを一緒につくろう」。
「ゲストハウスは建物だけあってもしょうがない、地域あってのことなので、一緒に作り上げながら、みんなにも地域の人と関わる魅力を知ってほしいです。」
「ツアーでは、私が現在ヘルパーとして働いているゲストハウスや、同日程で行われている黒田原映画祭、塩原温泉などにもお連れし、それぞれの場所にいるキーパーソン達に会ってほしいと思っています。那須町の人はゆるやか、おおらか、あたたかな町で、そういったところに共感してくれる人に来てほしいですね。
地方と関わるようになると、住まいを変えなくても価値観は大きく変わるはずです。まずは那須に遊びに来てください。」
コンパスツアーは10月1日からスタート
イベントの最後にはゲストと参加者の交流の時間を過ごしました。栃木とゆかりのあるフードコーディネーター「Kanami Matsumotoさん」による、ニラやかんぴょう、レモン牛乳といった栃木ならではの食材を使った軽食と共に、歓談を楽しみ、この日のプログラムは終了。
ここでできた縁がなにかのきっかけとなり、集まったみなさんの暮らしはきっと、より幸福に満ちたものになることでしょう。
続くコンパスのプログラムは、来る10月1日からツアーの本番へと入ります。初回は東京でオリエンテーションを実施。地域と関わるイロハを学びます。その後、足利と那須は別日程にて10月に1回、11月に1回の、計2回のフィールドワークへとつながっていきます。
毎年好評で幕を閉じるコンパスツアーの募集締切ももう間もなく。なにか新しく踏み出すきっかけがほしいという方のツアーの参加をお待ちしてします。これまでの暮らしにローカルを少しプラスしてみませんか。
ツアー詳細はこちら
(文:河野辺彬文)