移住先での仕事はどう考えてるの?リアルな意見を聞いてみた。

今年も秋が来ました。コンパスツアーのシーズンがはじまります。

 

「はじまりのローカル コンパス」は都市部に住みながら地方と関わるライフスタイルを推進するプロジェクト。主に栃木県を舞台にしたイベントを通して“自分なりの暮らし方”のモデルを見せてくれます。

 

毎年秋から冬にかけて「コンパスツアー ~ひととまちとつながる旅~」と題して、栃木県内の特定の市町をテーマにしたツアーを開催。その地方で新しく活動を始めた人や、地域を盛り上げようと活動している人が“地域ナビゲーター”となり、地元の人には当たり前すぎて気づかない面白い場所や、一味違った楽しみ方のある観光地へ連れて行ってくれます。

 

ただの観光ツアーと違うのは、地域の仕事やそこで暮らす普通の人々に触れさせてくれるところ。

 

ときに一緒にマルシェをやるような体験を提供してくれたり、立ち上げ予定のゲストハウス作りを手伝わせてもらえたりと、その町が“自分ごと”になるような機会がたくさん盛り込まれているのが大きな特徴です。

 

ツアー参加者の中には、ツアー先の人とのつながりができて一緒に仕事やプロジェクトを動かすようになった人や、週末の遊び場として東京から足繁く栃木に通うようになった人もおり、その後の地方との関わり方はさまざま。

 

今回は、今年もはじまるコンパスツアーに先立って、東京の清澄白河にある“いろいろな生き方・働き方に出会うことのできる場所”リトルトーキョーで行われた、「しごとバー×とちぎ ~ちょこっとローカルナイト~」のレポートをお送りします。

 

会にはゲストとして、今年のコンパスの舞台になっている下野市から相馬秀紀さん、佐藤寛記さんの2名、市貝町から柴美幸さんの計3名をお呼びして、地方とどんなふうにつながったらいいのか、地方での生き方についてをテーマに歓談を楽しみました。

「しごとバー」でのイベント開催ということで、集まった参加者に「移住先での仕事についてどう考えているか?」伺ったお話をメインに “地方と仕事”についての今をお届けします。

 

東京にいながら栃木に人をつなぐような存在になりたい

地元は栃木県の氏家町。今は東京で日本語学校の先生をしているKさん。地元に帰る予定はあるのかと聞くと

 

「帰りたいとは思っているけど、今の仕事を続けたい思いのほうが強い。栃木では今の仕事はほとんど見当たらないし、あってもちゃんとした給料を貰えるような環境ではない。今後も需要が増えるとは思えないので、移住は現実的には難しいと思っている。東京以外は考えにくいかな」

 

という厳しい意見に続いて、こうも

 

「栃木は自分の心の拠点がある場所なので、今の仕事ができる生活範囲内で栃木への移住は考えられるかも。ただ、今描いている将来の姿は、こうして東京にいながら栃木へと人をつなぐような活動をしていきたいと思っている」

ずっと続けられる仕事を探している

親族の家があって栃木は身近な場所だというWさんの現在のお住まいは埼玉。

移住先として栃木を検討しているのか聞くと、

 

「今は別の親族がいる山形にも興味があるんですよね。栃木も好きだし、山形も好き。将来はどちらかで考えています」

 

と、真剣に移住を検討している模様。続いて仕事について伺うと、

 

「今の仕事はやめて農業をしようかと。定年に縛られずに働きたいなと思っていて、自然豊かな場所で農業をするのがいいなって。栃木と山形とどっちも愛着があるので、栃木と山形をつなぐような活動もできたらいいなと思っています」

学生同士で栃木を盛り上げたい

栃木県高根沢町出身のHさんは、東京の大学3年生。

栃木県出身学生のためのコミュニティ「TCCTochigi Chatting Community)」を立ち上げたばかりということで、これからさまざまな活動を行っていくそうです。卒業後は栃木に戻るのか伺うと、

 

「卒業したら栃木に戻ろうかと思っています。団体での活動を通してそのまま起業してしまってもいいかと思っているし、誘ってくれている会社もあるので一旦そちらで働くことも検討しています。まだ、どうなるかはわかりませんね」

移住先探しは縁のあった場所のなかから考えます

栃木が地元だけれど、茨城の大子町へと移住を考えているというMさん。

以前はデザイン系の会社で品質管理の仕事をしていて、現在は東京に住みながらアトリエを開くため移住先を探しているそうです。

 

「大子町は移住先を探しながらたまたま訪れたときに、いいところだなって思って。移住者の受け入れ体制もいいんですよね。今はちょくちょく足を運びながら、つながりを作っているところです。ちょうど空いているビルもあって、そこをまるっと使ってシェアアトリエみたいにして、人が集まる場所を作れたらいいなと思っています」

 

栃木ではやらないのですか?と伺うと、

 

「検討してないわけじゃないけど、地元の受け入れ体制があんまりよくないんですよね。大子町のほうが魅力的なので、今はそっちに目が向いています」

戻ろうにもどうやって戻っていいのか

都内のライブハウスなどで照明の仕事をしているというSさんも、栃木に戻ることには興味があるようです。

 

「最近はだんだんと戻りたい気持ちになってきています。けれど、今の仕事は続けたい。栃木には働ける場所が少なくて、今の仕事だけで食べていくのは難しそうだから、結局戻らないかもしれませんが」

 

東京でやっている仕事を、そのまま栃木に持ち帰るのは難しそう。

そうした悩みに加えてもうひとつ、東京で仕事を得た人の戻りにくさの要因も話してくれました。

 

「仕事に関係するつながりがないのもネックなので、戻ろうにもどうやって戻ったらいいのかわからない。だれかそうしたつながりができたらいいなと思って、今日はここに来ました」

移住の前に地元の人とのつながりをつくりたい

続いて、足利市出身で今は東京で映像制作のディレクターをやっているというKさんも、先のSさんと同じような悩みがあるようです。

 

「栃木にはいつか帰りたいとも思うけど、いまのところなんのつながりもないので帰りにくいですよね。東京でまだまだ仕事していたい思いもあります。こういうところに来てだんだん地元の人とのつながりを作りながら、一緒になにかしていけたらと思っているところです」

栃木からの東京通勤も選択肢のひとつ

東京でマスコミ系の仕事をしているというAさんは、引越し好きでいろいろなところに住むのが好き。

次に住む場所を探しているそうです。

 

「東京に住むのはなんだか合わないと感じています。いろいろなところに住むのが好きで、千葉や神奈川など住んで、今は埼玉です。仕事は東京で続けて、住む場所は少し離れたところ。仕事とプライベートのメリハリがつく感じが気に入っていて、次は栃木もありかなと感じています」

地方では仕事を広げないとやっていけない

今回のしごとバーでも、さまざまな人に会うことができましたが、多くの人が“今の仕事をそのまま栃木でやるのは難しそう”と感じているようでした。東京のような多種多様な仕事があるところにいると、誰もが感じるものなのかもしれません。

 

こうした問題には、ゲストスピーカーの一人である、下野市役所勤務の相馬さんも話しています。

「地元だと“なにかやろう”ってなったときに頼める会社がないんですよね。行政側としては国や東京からお金をもらっていろいろできるのはいいんですが、地元にお願いできるところがなくて、結局東京の会社に頼んでしまう今の形はもったいないと思っています。東京に人が集まるのは当然だけど、戻ってきてもらえるように、今の人達が幸せに暮らせる形を作るのが大切だと思っています」

 

 

また、戻りたいと考えているけれど仕事がネックという人に「こんな方法もアリか」と思わせてくれたのが、市貝町で地域おこし協力隊をしている柴さんです。

「私の地元は栃木県の真岡市ですけど、たまたま友達と遊びで訪れた市貝が気に入ってしまって、軽いノリで来ちゃいました。とはいえ、仕事がないとどうしようもないので、地域おこし協力隊としてやらせてもらえないかと強引に売り込みました(笑)。地域おこし協力隊は基本的に副業OKなので、メインの仕事はちゃんとしながらで好きに活動できるのがいいですよ。一定期間は行政が生活を保証してくれますので、うまく活用したらいい思います」

 

地域おこし協力隊が自分からの売り込みで採用にいたるとは、目からウロコでした。

続けて、こうも仰っています。

 

「行政も地域おこし協力隊は手が回らなかったり過去やってみたけどうまくいかなかったりで、募集を出していないところもあります。自分から話を持っていけば通ることがあるので、住みたい町に募集がないからといって諦めなくても大丈夫です」

 

元々は都内でフォトグラファーをしていたという柴さんからは、地方での“仕事“を考えるうえで一つの解答となるような言葉も飛び出しました。

 

「もともとの写真のスキルを生かした活動も行っていますが、写真を撮るだけだと地方には仕事がないんですよね。単一の狭いスキルだけでは受けられる仕事が少ないので、自分であれもこれもやらなければ仕事にはなりにくいんです。基本スキルを生かしつつ、その関連業務も手がけるようにして仕事を生み出すようにしています。ただ、スキルを磨きたい、上を目指したいと思っているなら、まだ東京で頑張るのもいいと思います。東京にはたくさんの学びがあるので、やる価値があると思う仕事は今も受けています」

 

地方に戻りたいと考えている人には、相馬さんからの背中をひと押ししてくれる言葉を紹介します。

 

「時間をお金に交換するのが仕事だとすると、栃木はお金の代わりに時間があってまったりしています。やりたいことができて自分の人生を充実させるための時間をたっぷり使えますよ。」

コンパスツアーには、深く考えすぎず気軽に来てください

今回のイベントでは地方と仕事について、貴重な意見がたくさん聞けました。

 

移住を決断するには、仕事とどう折り合いをつけるのかは大きな課題です。

けれど、「移住だなんだと深く考えすぎないでほしい」という言葉で締めくくったのが、コンパスツアーの主催者である古河さん。

「コンパスツアーでは移住は考えなくていいんです。地域とつながってみるということが大事。新しい遊び場のひとつとして、ゆるい感じで遊びに来てください!」

 

今年のコンパスツアーは下野市・市貝町の2都市がテーマです。それぞれの地域の方々とコンパス運営メンバーはもちろんのこと、たくさんの人が集まってツアーを盛り上げてくれます。他にも同じく栃木県内の益子町や那須烏山市、足利市でも地域とつながるツアーが開催予定です。

 

コンパスツアーでは、

 

・地域で何かやってみたい方

2拠点での暮らしに興味がある方、または憧れている方

・ローカルに関わってみたいけど、方法がわからない方

・とちぎが好きな方、とちぎにご縁・興味関心のある方

・ローカルに興味があるけど、遠くて中々足を運べない方

 

など、栃木県にゆかりのある人だけに関わらず、地域とのつながり方を模索している人を応援しています。

本日の参加者たちから聞けた悩みも、解決の糸口がみつかるかもしれませんよ。

 

地方が気になっている人は、ぜひ参加してみてくださいね。

 

今年のツアーの詳細や魅力については、これからどんどん紹介していきます。どうぞお楽しみに。

 

 

ツアーの詳細はこちら

 ■10/13(土)-14(日)@栃木県・市貝町 

  暮らしとしごとをめぐる旅 #05 「小さいまちで、小さい楽しみをつくる編」

  詳細:https://www.hajimari-local.jp/event/18short05/

 

 ■10/20(土)〜全3回@東京都/栃木県・下野市 

  ひととまちとつながる旅 「"笑い× 地域の資源"で賑わいをつくる」

  詳細:https://www.hajimari-local.jp/event/18long/