田舎暮らしの生の声きいちゃいました。
2020年で6年目に入る「はじまりのローカル コンパス」。これまで栃木県内の様々な地域を訪ね、その土地の人と暮らしに触れ合い、参加する人が訪れた土地に愛着を持つことにコンパスのツアーが一役買ってきました。
そして、ツアーとセットとなっている「キッカケをつくる場」。栃木県にゆかりのある人もない人も、地方で活躍するニュープレイヤーたちの話を気軽に聴くことができるイベントです。主に東京都内で開催されてきましたが、今回はオンライン開催。
今年の1dayトリップ in 益子のテーマである「農」に関わる3名のゲストスピーカーと、9名の参加者、3名の益子町役場の方とで開かれたイベントの様子を紹介します。
“農”を基盤にした3人の暮らし
イントロダクションでは、益子町の担当職員による町の紹介からスタート。
「陶芸のまち」としてよく知られる益子町ですが、ほかにも藍染や木工、革製品などの工房が多い「手仕事のまち」、縄文時代の古墳や中世の寺社仏閣が残り長く人が暮らしてきた「歴史のまち」、そして今回のテーマであり、米や麦、蕎麦のような穀類の他、特に果樹栽培も盛んに行われている「農業のまち」という、4つの特徴があるそうです。
そんな「農業のまち」益子町で、農に関わるゲストスピーカーの3名がこちら。
益子町出身で、地域おこし協力隊を活用してUターンし就農。同じく地域おこし協力隊で活動していた彩香さんと出会い、任期終了後に結婚。現在は2人ではじめたユニット「Neharu」で、「季節の実りをGoodsにして届ける」という、作って届けるまでの一連の流れを手掛けています。作った製品は、HP「益子、くらしの土産店」の他、道の駅などで販売中。
沖縄県出身で、現在は益子町地域おこし協力隊のひとりとして活動中。ぶどう農家で技術を身に着けながら、果樹に関する情報の収集・整理を行う他、後継者のいない園地を管理し、栽培技術を習得することで任期後の就農へ向けて準備を進めています。
北海道出身で、益子町地域おこし協力隊のひとりとして、城間さんと同じぶどう農家に従事中。果樹園継承など農業を仕事とするための仕組みづくりと、自身の就農のためにぶどう等果樹の栽培技術を学んでいます。
益子町ってどう? 一問一答ゲストの本音
ゲストの一通りの自己紹介&活動紹介のあとは、益子や農をキーワードにしたトークセッション。今回のイベントには、益子町そのものや農業や田舎暮らしに興味があるといった方が多く集まっていました。今回のレポートもそうした方が多く読んでくれていると思いますので、主に聞かれた内容を一問一答形式でまとめました。
益子町の第一印象は?
城間さん「自然が豊か、芸術家が集まっていて面白いという印象でした。」
橋本さん「落ち着いた町だなと。東京から出てきたので、車の音が少なく虫の声や蛙の声が聞こえるので、心が落ち着く感じがあります。」
仁平さん「実家だなぁという感じなんですが(笑)。昔はここまで活性化していなかった印象で、町がにぎわってきたころに帰ってきたので、いい波に乗れていると感じています。」
栃木弁・栃木の言葉は伝わってる?
城間さん「たまに作業中のおじさんの言葉にわかりにくいものが出てきます。笑ってごまかしながら、伝えたいことを感じ取っています。」
橋本さん「上の世代の方になるとわかりにくい言葉がよく出てきます。」
仁平さん「長崎出身の妻は、今何言ってたの? がよくあって苦労したみたいです。今はだいぶわかるようになってきたみたいですけど、しゃべりのリズムにはまだ馴染めていないようです。」
田舎特有の見られてる感はありますか?
城間さん「町の広報紙だったり、スーパーで買い物している様子を見かけているようで、会ったときに、"どこどこにいたでしょっ?”と言われることが多いです。」
橋本さん「自分がなにかした際に、関係ない人からもそれについて声をかけてもらえるので、話がつながっていっていて嬉しい反面プレッシャーにもなっています。」
仁平さん「地域おこし協力隊のころは見られてる感があって、何をやっているの? って聞かれることが多かったです。新規就農してからは受け入れてもらえたようで、そういう質問は減ったんですが、その代わり畑を見られるようになりましたね。自分より早く発芽に気づかれるなんてこともありました(笑)。」
益子に来て良かった出会いはありましたか?
城間さん「話をする前は怖い感じの農家さんでも、しゃべると世話好きで柔らかくて、何にでもアドバイスしてくれる方がほとんどなので、すべてが良い出会いだと思っています。そういう硬い表情をしていた人達に褒めてもらったり、ぶどうを食べて美味しいって言ってもらえるのが嬉しいですね。」
橋本さん「まだ5ヶ月目で多くの農家さんと関われているわけではないですが、関わる人皆がいろいろ教えてくれます。こっち側の立場に立ってアドバイスしてくれる人もいるので、ありがたいなって思います。」
仁平さん「昔は自分の住む地域の人くらいしか知らなかったですけど、地域おこし協力隊を通して色々なところに行けて見聞が広がりましたね。妻と2人で活動していると、初めての人も警戒心が和らぐのかすごく良く話してくれます。男性だけで行くと警戒されたり、女性だけだと行きにくかったりするみたいなんですが、男女セットでの活動では"孫が来た”という感じで可愛がってもらえました。」
地元農家さんの考えとぶつかることはありますか?
仁平さん「有機農業の先駆者がいて、その方に教えてもらっている形なので、"新しいことを始める人への当たりの強さ"みたいなことは少ないですね。ただ、その方からは、自分の畑をちゃんと見ることが大事、新しいことをやるときは人にやっている姿を見せることが大切だと、そういうことを言っていただきました。自分のやっている姿をしっかりと見せていく姿勢のほうが理解してもらいやすいのかなと。」
就農のハードルとは絶賛向き合い中
ゲスト3名にお話を伺ったあとは、「地域おこし協力隊チーム」と「Neharuチーム」に分かれて、それぞれへの質問タイムの時間を取りました。今回のレポートでは、ツアーの際に主に関わってくださる、地域おこし協力隊チームのお話を紹介します。
特にみなさん気になったのが、地域おこし協力隊の今とその後について。
城間さんと橋本さんが取り組む活動には、果樹園地継承の仕組みづくりがミッションとして与えられており、現在はそうした後継者不在のぶどう農園を借りている形です。
地域おこし協力隊の任期終了後も、今の農園を借りて農業が行える話になっているようですが、まだまだ勉強中の身。本格的な就農の準備を進めながら、活動のフィールドを広げて、
任期後に、独り立ちできるように考えている最中とのこと。
これからの活動としては、
・販売サイトの作成
・新植、改植、補植
・販路拡大
・オンライン企画
・出店
・園内を利用した企画
・技術研修
・商品の多様化
・地域農家の手伝い
などを考えていて、ドイツのクラインガルテン(小屋付き貸農場)のような施設や、自分たちの直売所を作ることが目標のようです。
また、参加者から寄せられた「なぜぶどう栽培で益子を選んだの?」との質問については、
橋本さんは「ちょうど農業で地域おこし協力隊の募集をしているところがもうひとつあって、そこと悩んだのですが、益子に立地のちょうど良さを感じました。都心にもほどよく近く、バランスの良い生活ができそうで。」と語り、城間さんは「益子には経済基盤ができている農家さんが多くいて刺激を受けていたので、益子で農業がしたいが先にあった。そこから地域おこし協力隊やぶどう栽培があとから付いてきた形です。」と、それぞれが感じている益子の良さを聞くことができました。
今回のイベントはここで終了。
このあとは、ゲストや参加者の立場を取り払った交流会が行われ、主に就農トークで盛り上がり、農業に関わりのある人もそうでない人にも貴重な時間となったようです。
今年の秋は農のハードルが下がる旅を
さて、就農に興味がある、農的な暮らしに興味がある、農に触れるきっかけが欲しいという人には、このあと10月3日(土)に1dayトリップ in 益子が用意されています。
新しい土地で、新しく農業に取り組む2人の若者と一緒に、「里山×農業」の暮らしを体験して、一緒に考えてみませんか?
スタッフ一同お待ちしております。
これまでの暮らしにローカルを少しプラス。
コンパスツアーの詳細はこちら
(文 河野辺 彬文)
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