【レポート】「一緒に未来の話をしようよ」まちの余白にあなた色をつける仕事って? #下野市

 

実は今、栃木県下野市で、”コミュニティエディター”なる仕事を担ってくれる地域おこし協力隊の募集が行われています。

下野市と言えば「はじまりのローカルコンパス」でも、2018年のコンパスツアーの舞台となった場所。今回は、そんな下野市協力のもと、全国のまちにとっても必要な、”まちの編集”をテーマに開かれたオンライントークイベントの模様をシェアします。

 

本イベントは、私達「はじまりのローカルコンパス」と栃木県と関係がある人や関係を作りたい人が集って”栃木”をキーワードに語り合う「栃木ゆかりのみ」のコラボ企画。今流行りのZoom上に、下野市や”まちの編集”というキーワードに興味を惹かれた人が集いました。

 

 

 

 

求人をイベント化するアイディアって新しい

 

いきなりなんですが、求人の内容についてまちの内外の人が語り合う場ってどんなだろうって気になりませんか?
一般的な求人って、書面に応募要項が並べられていて「こんな人を募集しています!」という一方的なアプローチ。採用担当者と知り合いでもない限り、具体的な仕事内容や働く場所についての情報は自分で想像を膨らませるか、面接の場で聞くしかないことがほとんどです。

それを、求人の内容やどんな人が来てほしいか、どういう仕事をしてほしいのか、オープンな場で話し合うってなんだか新しい。

 

今回のようなイベントが行われている時点で、”コミュニティエディター”や”まちの編集”といった仕事にしてもそうですし、情報発信に対しても熱があるまちということが伝わってきます。

 

そんな下野市がどんなことを考えているのか、イベントの内容から紐解いていきましょう。

 

イベントは、栃木ゆかりのみを主宰する株式会社kaettaraの永井彩華さんと谷津孝啓さんをモデレーターに、トークゲストとして、下野市のまちづくり会社「一般社団法人シモツケクリエイティブ」の山口貴明さんと、下野市地域おこし協力隊として活動中の大坪亜紀子さんの4名がメイントーカーとなって進行しました。

 

 

【下野市からのトークゲストはこちらのお二人】

大坪 亜紀子 さん
(下野市地域おこし協力隊・訪問美容サービス「giveto.」・「しもつけサーカス」主宰)
北海道室蘭市出身。東京で15年間美容師として働いた後、2019年下野市へ移住。今年度から、美容師スキルを生かし介護スタッフとチームを組んだ新しい訪問美容の形『giveto.』を立ち上げ、活動中。自身の取り組み×地域活性をリンクさせた情報発信から関係人口を増やす取り組みをしている。その他、市内情報を集約させた情報シェアサイト『しもつけサーカス』の運営も手掛ける。

 山口 貴明 さん
一般社団法人シモツケクリエイティブ ・一級建築士事務所AMPworks)

栃木県下野市出身。2011年に「一級建築士事務所AMPworks」を創業し、住宅設計や店舗デザインを行う。地域の仲間たちと「しもつけマーケット」の運営を行う他、市内有志で結成したまちづくり会社「(一社)シモツケクリエイティブ」では、公園のエリアの管理や古民家カフェ「 10picnictables」等、多くの地域活性事業を手掛ける。

下野市の課題とまちのプロジェクト

 

下野市は、まちづくりに関心のある人たちには、かなり面白いことが行われているまちとして知られおり、市民団体やまちづくり会社などによりたくさんの活動が行われています。




このように、多数の活動が行われている話を聞くと、活性化していて盛り上がっているまちなのでは?どんな課題があるのか?と気になるところ。イベントの参加者からは「仕事をしに来る人にとっては、どんな魅力があるかよりも、どんな課題があるか教えてもらったほうが興味がわく」という意見もありました。

 

 

実際に、下野市の課題として上がったのは大きくは以下の2点。

 

・面白い取り組みはいっぱいあるのに、その情報が全然外に伝わっていかない

・それぞれのジャンルでプレイヤーが揃っていて、できることのマックスが近い状態

 

ほかの市町村からすると羨ましい悩みかもしれませんが、「これ以上なにをやれば」状態のよう。そこで、今の下野市にはいない、まちの新しい掛け合わせを考え、内外への情報発信をしてくれる人、「それは編集者だ」というのが今回の求人の核のようです。

 

 

 

まちの編集とは”未来を作る”という説

 

そこまでなら、編集者のイメージどおり。まちの編集者に求めることや、下野市ではどんな人に来てほしいと思っているのかというお話しを紹介しましょう。

 

大坪さん:地域の人には「自分の地域が良ければいい」という感じのスタンスの人もいる中で、まちの情報を発信をすることは、下野市だけではなく、全国どの地域でも共通の話で、その地域でより良く暮らすために必要なのではと感じています。

 

山口さん:自分たちの取り組みは地方創生とかまちおこしとかの意識はなくやっている。だから、地域外の人や様々な地域の利活用とか地方創生のような考えを持った人が来て、「あなた達が地域でやっているたことってこういうことだよね、こういう発信ができるかもね」といった、今までと違った視点を持った人が入ってきてくれると良いかなと。

 

谷津さん:下野市にはすでにいろいろなコトが起こっていて、現在あるものに関わろうとすると入り込みにくいのかなという気もするのですが、未来には関わる余白がありますよね。”まちの編集”というのは、「今のなにかを伝える人というよりは、未来ではどんなことができるのか、どんなことが起ころうとしているのかを伝える役割の人」と考えると面白いのでは?という気がしています。

 

中の視点と外の視点のバランスを取りつつ、内外の人へどんな下野市を見せていくか未来を語る。あぁこれは編集の仕事だと浮かんだのと同時に、”まち”という媒体の方向を示していく編集長というイメージのほうがより近くに感じました。



下野市の人たちはどんな人たち?

 

下野市には、まちの人たちが自主的に活動している市民団体が数多くあるように「なにかやりたい」を応援する人たちも多いようです。まちの編集長としては、どんな人がいるのか、どんなネタが落ちているのか、気にならないわけはありません。

 

大坪さん:私は仕事と直接関係のない自身の内面の部分はあまり聞かれたくない派だったのですが、でもそこを引き出してくれる地域の人に触れたことで、それも悪くないなと思うようになりました。

自分がやりたいことができたときにどういうプロセスで進めたらいいかわからない。プロセスはわからないがやりたいことはある。そういうものを手順として説明してくれる人がいる、一緒に作っていこうよって相談を聞いてくれる人もいる。じゃあって言って人を紹介してくれる人もいる。

活動している本人たちは、地域を巻きこんでいるって感覚がないくらい自然です。

 

山口さん:東京や宇都宮のほうが、なにかの成果をあげるには向いていると思いますが、下野市には、「“どこで”、よりも、“何をやりたい・はじめたい”それもここで」っていうメンバーが揃っている印象です。だから、下向いた人がいたら上を向かせてあげたいし、なにかに挑戦する同士としてライバルにもなってほしい。今までやってきたことがあるので、新しい人には先輩面する時もあるかもしれないけど(笑)、全力で応援もしています。ベンチャー的なことは六本木に行かなくても下野市でできる!って場所になればいいなと思いますね。

 

谷津さん:情報発信って情報を見つけにいくことが一番難しい。そこが担保されていないまちだとかなり苦しいですが、話を聞いていて、おそらく下野市は情報が勝手にやってくるのでは?って感じました。下野市は情報取得のハードルがすごく低いんじゃないかなって思います。

 

大坪さん:まさにそうで、地域おこし協力隊1年目は情報量の多さに自分じゃどうにもできないと感じるくらいでした。地域のみんながいろんなジャンルのキーマンになっていて、そういう人たちのいいところを、引き出すだけでもすごくまちが良くなる気がします。

 

谷津さんの「下野市で活動している人を編集すれば一つのポートフォリオができる。下野市はポートフォリオの作りやすいまちなんじゃないか?」というコメントに、山口さんは「編集者って名乗っている人はまだいないので、今がチャンスだと思います。すぐにでも月刊誌3年分くらいはネタが集まりますよ!」と、前のめりにうなずいていました。

 



下野市と関わってみたいかもという人へのメッセージ

 

谷津さん:まちの編集っていうスキルの話じゃなくて、こういう現状を聞いてなにかやってみたいって思う人ならフィットするんじゃないかな。人の話を聞くのが好きな人に入っていってもらいたいと思いました。

 

大坪さん:下野市に来たばかりのころはやりたいことがぼんやりしていましたが、下野市の人たちは私が本当にやりたいことを引き出してくれたので本当に感謝しています。心の広い人がいることを体感できる場所です。

 

山口さん:僕自身、こんなことやっています、あんなこと考えています、とは言っていますが、決して成功しているとは言っていないです。でも、考えて実践しないことには成功は絶対にないですからね。、でもそんなもんでいいんじゃないかなと。気軽な感じで一歩を踏み出すのは絶対に必要だし、楽しいよっていうことを伝えたいですね。

 

 

下野市と関わってみたい人へというメッセージも三者三様。もちろんスキルがあったほうが良いのだとは思いますが、そうでなくともやってみたい、という気持ちがあれば、まちの人に導いて貰えそう。そんな気がするイベントで、最後に、山口さんの「未来のこと話したり夢の話するのって楽しいじゃないですか!」という言葉にうなずきながら、こちらも楽しい時間を過ごさせていただきました。



\地域おこし協力隊と今回の下野市の採用情報はこちら

【“等身大でクリエイティブなまち”が、栃木にあった!下野市で関係性づくりに取り組む「コミュニティエディター」の意義とは? #仲間募集】

https://greenz.jp/2021/03/05/shimotsuke_kyujin/

※greenz.jpさんに取材いただきました。活動の詳細を知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。

 


【下野市地域おこし協力隊 コミュニティエディター募集中】
https://www.city.shimotsuke.lg.jp/2055/info-0000006073-1.html


(文・河野辺彬文)