みなさん、ちょこっとローカル、してますか?
今回のコンパスツアーは、ローカルに根付いたお店としごと編。 栃木県の大田原市、那須烏山市、さくら市を2日間で旅してきました!
2日間をともに過ごせば、もうファミリー同然! そんなあったかい「チームコンパス」の旅の様子を、栃木県出身ライターの山越栞が振り返ります!
スポット①:「熊猫ダイナー」で栃木県産食材を使ったランチを堪能
宇都宮駅に集合した参加者一行(以下、チームコンパス)が向かったのは、大田原市にある『熊猫(くまねこ)ダイナー』さん。
栃木県産の食材を使った、本格エスニックフードがいただけます。
香辛料たっぷりの薬膳スープや、蒸鶏がたっぷり乗った海南鶏飯に、デザートはもちろん、栃木のブランドいちごである「とちおとめ」の杏仁豆腐!
初対面の参加者さん同士でも、いっしょにごはんを食べたらさっそく打ち解けた様子です。
スポット②「秋元珈琲焙煎所」で、Uターン開業のお話を聞く
続いて向かったのは、同じく大田原市内にある『秋元珈琲焙煎所』。
バスを降りた瞬間、コーヒーのいい香りがただよってきました。
代表の秋元健太さんは、大学を卒業後、栃木へのUターンを決意。
地元の銀行に勤めたのち、昔から大好きだったコーヒーの仕事を始めるために、県内でも有名な焙煎所に弟子入りし、独立しました。
現在は、奥さんとお姉さんとの3人で、『秋元珈琲焙煎所』を営んでいます。
ご実家の納屋を改装したスペースは、こんな感じ。
秋元さん自ら少しずつ集めたというアンティークのインテリアと調和して、素敵な雰囲気に仕上がっています。
そんな場所で、秋元さんのお仕事について伺いました。
「よく、“会社員を辞めて好きな仕事に踏み切るなんて勇気があるね“なんて言われるのですが、元々そういう性格なんです。やると決めたら後先考えずに突き進んでしまうので、このお店も、やりながら少しずつカタチになっていきました。」
とはいえ、秋元珈琲焙煎所があるのは、田んぼや畑の広がる土地のど真ん中。 正直、商売として成り立つのでしょうか…?
「InstagramなどのSNSで毎日発信をしたり、お店が休みの日に県内のマルシェに出展したりしていくうちに、遠くからもここを目指して来てくださる方が増えてきたんです。平日の昼間は近所の奥さんやおじいちゃん、おばあちゃんが来てくれていて、地域の人たちとのコミュニケーションがたくさん取れるのも、お店を構えているメリットですね。地元の同級生たちの中でも、僕がいちばんみんなに会えている自信があります(笑)」
自分らしく、好きを仕事にしながら生計を立てている秋元さん。
ここで、定期的に行っているハンドドリップ講座をチームコンパスも体験させてもらいました!
まずは秋元さんのお手本から。
新鮮な豆は、お湯を注ぐと空気を含んでモコモコふくらんでいきます。
またもや、部屋の中にコーヒーのいい香りがふんわり。
美味しくなるコツを教わり、自分で淹れたコーヒーは格別!
好みの濃さに調節したら、自然と味見大会がはじまりました。
この和やかな雰囲気、いいなぁ。
隣接しているショップスペースでは、コーヒー片手にほっと一息つけるスペースもあります。 今度はここでゆっくりしていきたいな、なんて思いながら、私たちは次の場所へ。
【秋元珈琲焙煎所】
住所: 栃木県大田原市親園2301
TEL:080-8874-8361
スポット③「黒羽藍染紺屋」で若き職人に出会う
続いては、秋元さんとも定期的に共同イベントを行っている『黒羽藍染紺屋』の小沼雄大さんのところです。
こうして、近くの同世代で手を取り合って活動している点も、地域で仕事をする醍醐味かもしれません。
『黒羽藍染紺屋』は、創業約200年もの歴史を持つ老舗の藍染め屋さんです。
暖簾をくぐると、店内にはオリジナルの商品が並んでいました。
さらに今回は、特別に作業部屋にまで入れていただきました!
藍染の工程を、写真やイラストを交えて分かりやすく説明してくれる8代目の小沼さん。
近所の小中学校に講師として出向くこともあり、楽しいトークもお手の物です。
これが、藍染の素となる「すくも」。
初めて見る素材に、みんな興味津々でした。
8代目自ら、経験がモノを言う職人技も披露してくださいました!
オリジナルグッズの中には、藍染のスニーカーなど、現代のトレンドに合わせた商品もちらほら。
小沼さんのセンスが光っていました。
【黒羽藍染紺屋】
住所: 栃木県大田原市黒羽向町88
TEL:0287-54-0865
スポット④:『ほたるの里の古民家 おおぎす』で里山の取り組みを知る
辺りもだんだん暗くなってきたところで、いよいよ今晩の宿泊先へ。
『ほたるの里の古民家 おおぎす』です。
ここは、栃木でもいち早く民泊や農泊をスタートさせた施設。
地域の人々や宇都宮大学の学生たちによって、田舎のくらしを体感できる施設へと蘇りました。
ここで、『おおぎす』を管理している一般社団法人里山大木須を愛する会のみなさんに、施設立ち上げの背景を説明してもらいました。
もともと、この地域は「栃木のチベット」とも呼ばれるような山奥です。
平成3年にここが産業廃棄物の最終処分場候補になったことから、豊かな自然を守るために、地域の人々や外部のアドバイザーさんが一丸となって、大木須の魅力を伝える活動に力を注いできました。
一般社団法人里山大木須を愛する会の詳しい活動については、こちらから。
現在は産業廃棄物の処分場候補からも外れ、この大木須地域をより知ってもらう活動に力を入れているそうです。
さてさて、『おおぎす』の背景を知ったあとは、地域の人々も交えての夕ご飯です!
かんぱーい!!
スタッフのみなさんによる豪華なおもてなしに、コンパスメンバーもあちこちから「おいしそう!」の声。
囲炉裏で炭火焼にした川魚や、
翌日に訪問予定の『烏合の手』さんが製造するトマトジュースとみかんジュースも!
栃木のローカルでできること、チームコンパスの夢など、熱いトークが夜中まで続きました。
2日目
朝になって外を眺めると、前日には暗闇でわからなかった里山の景色が辺りに広がっています。
目の前の小屋では、炭で火を起こす煙がもくもく。
東京では見ることのない風景ですよね。
「おおぎす」の全景も。
赤い大きな屋根がすてきです。
辺りには、朝の霧が立ち込めていました。
【ほたるの里の古民家 おおぎす】
住所:栃木県那須烏山市大木須1285
TEL:0287-82-7255
一晩ですっかり馴染んだ「おおぎす」を出て、2日目のツアー開始です!
スポット⑤:国見のみかん畑と烏合の手
宿を出てまず向かったのは、那須烏山市の国見地域。
なんとここは、みかん栽培の日本最北限の地なのです!
チームコンパスが覗いている里山風景の先には…?
日当たりのよい斜面を活用したみかん畑が。
国見みかん生産者の川俣さんに、中を案内していただきました。
ツアー当日はみかんの収穫は済んでいたのですが、なかにはまだ少し、オレンジ色の実がちらほら。
ご厚意で、自分たちで採ったみかんをいただけることになりました!
国見みかんの特徴は、味の濃さと、強い酸味。
ひとくち食べると、ギュッと詰まった大自然のビタミンがそのままカラダに染み込んでいくような気分になります。
このみかんを使用したジュースを作っているのが、前夜の飲み会にもゲストとして来てくださった、『烏合の手』のみなさんです。
ということで次に向かった先は、同じ那須烏山市にある『烏合の手』の斎藤貴広さんが働く建築事務所。
市街地の一角に、おしゃれな看板を発見! 斎藤さんの本業は建築士。
同じく建築士のお母さんと共に、空き家をリノベーションして事務所として使っています。
中に入れてもらうと、古いものを活かした内装が素敵です。
斎藤さんは、このように本業の建築のお仕事で、空き家の再生についても積極的に活動しています。
ここで、斎藤さんに『烏合の手』の発足と活動内容についてお話しいただきました。
「僕たち『烏合の手』は、同じ高校の同級生同士で年末に飲んでいるときにはじまったんです(笑)せっかくだから地元のためになることをしたいね、という話になり、メンバーの一人が持っている畑でまずはトマトを栽培して、ジュースを作りました。先程の国見みかんのジュースも、その翌年に完成しました。」
「その他、那須烏山市では国の指定文化財にもなっている『山あげ祭』があるのですが、その時期に、近隣の人たちとマルシェを行ったり、たくあんづくりのワークショップを行ったりしています。」
そんな風に、ちいさな「やってみよう」を少しずつカタチにしていっている『烏合の手』のみなさん。
それぞれに仕事をしながら、こうして二足のわらじの活動をするのには苦労もあるようですが、何より楽しそうで、いきいきと活動内容をお話くださっているのが印象的でした。
そしてなんと、お昼には『烏合の手』のトマトジュースを使ったトマトラーメンをご馳走していただきました!
濃厚だけどさっぱりとしたトマトの酸味が、ラーメンのスープにぴったり!
一緒に出していただいた、那須烏山のソウルフードである石原食肉店さんの「軟骨煮」とコロッケも美味しかったです。
そんな、斉藤さんをはじめとする『烏合の手』のみなさんのおもてなしに、あたたかさを感じたチームコンパスなのでした。
【烏合の手】
住所:栃木県那須烏山市
TEL:028-685-3841
さてさて、もうすぐツアーも終盤に近づいてきました。
スポット⑥:喜連川丘陵の里 杉インテリア木工館
最後の訪問先は、さくら市にある『喜連川丘陵の里 杉インテリア木工館』。
ここは、廃校になってしまった「穂積小学校」の校舎を活用し、木工教室や地域のイベントスペースとして愛されている施設です。
代表の薄井徹さんが、施設の紹介をしてくれました。
この木工館がある喜連川地域は、日本の里山風景が残るのどかな場所。
それと同時に、高度経済成長期の時代に植林された杉や檜がそのままになっており、生態系への影響も懸念されています。
里山の環境を守るため、国産の杉・檜材を有効活用し、様々な取り組みを行っているのが、こちらの木工館なのです。
木工の技術を熟知した薄井さんをはじめとするスタッフのもと、初心者でも短期間で本格的な木工が学べる「木工塾」が用意されています。
お孫さんが使える木のイスを作ってあげたい、などの素敵な動機で、この木工塾に通う方も。
また、元小学校だからこその広い敷地を活かし、アートフェスティバルの展示会場や、貸しスペース、近隣の子どもたちの児童館のような存在としても利用されているそう。
遊びに来てくれる子どもたちのために、薄井さんお手製のこんな超大作まで!
風合いのある木材で作られたこんな遊び場が近くにあるなんて、この地域の子どもたちがちょっとうらやましくなりました。
【喜連川丘陵の里 杉インテリア木工館】
住所:栃木県さくら市穂積478
TEL:028-685-3841
つぎはどんな人に会えるかな? あなたの参加をお待ちしてます!
今回も、個性豊かであたたかい「チームコンパス」に恵まれ、愉快な2日間を過ごすことができました。
参加者の方々は、いずれUターンを考えている栃木出身者や、ローカルでの暮らしに関心がある人、都内でなにか新しいことをはじめようとしている人などなど。
「移住」となると少し重たいけれど、10%くらい、あなたの生活にローカルな要素をご提供できたら幸せです。
さてさて、これからも「暮らしとしごとをめぐる旅」は続きます。
新しい発見や出会いを探しに、ふらりと栃木にいらっしゃいませんか?
(文・山越 栞)