「コンパスツアー」が始まってから3年目のフィナーレを飾るのは、
暮らしとしごとをめぐる旅#04-ローカルに根付いたお店やしごと(日光/鹿沼編)です。
今回も、地域と関わる暮らしのはじめ方やヒントを探しに、各地のローカルスポットを訪ねました!
朝の東武日光駅。
8名の参加者のみなさんとともに、今回の「チームコンパス」が集合しました。
花粉が舞う季節とあって、マスク率高め。笑
まずはここでスケジュールを確認しつつ、栃木での新たな出会いが生まれるツアーの幕開けです。
さてさて、今回はどんなツアーになるのでしょう…??
スポット①日光ゲストハウス 巣み家
最初に向かったのは、日光駅からほど近い駅前エリアに居を構えるゲストハウス「巣み家」です。
今日出迎えてくださったのは、オーナーの佐藤雄大さん・久美子さん夫妻と、スタッフのようこさん。
宇都宮市出身の佐藤さんご夫妻は、シンガポールでの海外生活を経て、地元である栃木にUターン。
ようこさんは、群馬県出身で宿泊客として日光を訪れてから3か月後に日光へIターンされていて、今に至るまでの経緯にもエピソードが満載のお三方です。
半年かけて自分たちで古い物件のリノベーションを行い、当時はまだ日本で少なかったゲストハウスとして、2010年5月に「巣み家」をオープンしました。
日光という地域柄もあり、ゲストハウスに宿泊されるのは90%以上が海外の方。
普段なかなか会えないような国や地域の方々に出会えるのが、この仕事の面白さなのだそうです。
そして、「巣み家」は旅行者も地元の人も集まる“地域の居場所”を目指しています。
宿泊客同士の国際交流はもちろんのこと、地元住民しか知らないような地域行事にも参加できる機会を用意するなど、
地元の人と交流して「普段の日光の暮らし」に触れられることを大切にしています。
こたつをみんなでぐるりと囲み、佐藤さんご夫妻のお話を聞くチームコンパス。
こんな風に、初めて訪れた場所、初対面の人同士でも不思議と打ち解けあえる空気感は、佐藤さんご夫妻の気さくな人柄があってこそです。
出会いのキッカケやぽんと背中を押してくれる人の存在は、移住をする時も大事ですよね。
話はどんどん進み、ゲストハウス開業に至る経緯の話へ。
佐藤さんご夫妻がシンガポールを軸に周辺諸国に足を運んだ経験と、帰国後ふと訪れた日光の観光客の姿がひとつに繋がり、
「外国の人や旅行者の役に立つ仕事がしたい」と思ったことが「巣み家」のはじまりだそう。
参加者からも盛んに質問が飛び交います。
まずは、ゲストハウスをやろうと思った理由について聞かれると、
「シンガポールでの海外生活の経験と自分にできることを組み合わせた結果だったかな。人はバックグライドから逃げられない。人生は積み重なってできていくから。」と。
そんなお話を聞いて、ふと、自分のこれまでを振り返りたくなりました。
そして、物件をどうやって探したのかという質問へ。
なんとこの物件は、不動産屋さんにほとんど行かず、佐藤さんご夫妻が自分たちで日光じゅうを3か月訪ね歩いて見つけたそうです。
地域で活動をはじめるときの課題としてよく挙がるのは、空き家があっても情報がなかったり、貸してくれないことが多いことです。
「巣み家」の物件ように表に出ていない空き家に出会うためには、
・地元の人(地元の”ドン”みたいな人)と繋がること
・やりたいことの明確なイメージを持っていること
がポイントになるというアドバイスもいただきました。
この2つができると、予想以上に物事が進むそうです。
このポイントは、物件探しだけでなく、移住や地方に関わる上でとても大事なことだなと強く感じました。
お話を伺った後は、恒例(?)の
\はい、コンパス♪/
日光市街をお散歩
ここからは、日光市地域振興課の辰巳さんと元ふるさと回帰支援センターの遠藤さんに、地元民ならではの案内をしてもらいました。
駅前の広場から二社一寺の方向へ伸びる道沿いには、新旧さまざまなお店が。
チームコンパスのメンバーもキョロキョロ辺りを見回します。
古くから観光客を迎えてきた日光駅前の通りには、こんなレトロな看板もちらほら。
ジョン・レノンも宿泊したという日本初のリゾートホテル、「日光金谷ホテル」もちょっぴり見学させてもらいました。
金谷ホテルを後にして進んでいくと、重要文化財にも指定されている「神橋(しんきょう)」が。
この日は曇り空でしたが、それでも、真っ赤な漆で塗られた橋の存在感は絶大です!
誰も一度は観光で訪れたことのある日光ですが、有名な特産品や町並み、建物が、どういう歴史を経て今に至るのかをわかりやすく解説してもらい、
より日光を深く知ることができた街歩きでした。
そうこうしているうちに到着したのは、こちらの「日光珈琲 御用邸通(にっこうコーヒー ごようていどおり」。
ここは、日光田母沢御用邸記念公園からすぐの古民家を活用したカフェ。
歴史を感じる建物と現代のセンスが融合したおしゃれな雰囲気のお店には、多くの若者が足を運びます。
美味しいコーヒーだけでなく、こんなに本格的なオムライスもいただけちゃうんです♪
腹ごしらえも済んだところで、一行は次なるスポットへ。
【日光珈琲 御用邸通】
住所:〒321-1434 栃木県日光市本町3-13
TEL:0288-53-2335
スポット②TEN TO MARU(雑貨店)
日光の主要観光地である日光東照宮や二荒山神社からほど近い場所にある「TEN to MARU」。
オーナーの渡辺直美さんは鹿児島県出身で、結婚を機に2006年から栃木県に移住しました。
日光では、木工作家である友人のお店をお手伝いした時に、足を運んでくれたお客さんとの出会いや交流がとても楽しく、
「自分でもお店を持ちたい」と、御朱印帳や作家さんのオリジナル商品を中心に扱うセレクト雑貨店をオープンしました。
店名の「TEN to MARU」は、お客さんや作り手さんをはじめ一人ひとりの出会い(TEN)が結びつき、大きな輪(MARU)になるという思いを込めて名付けたそうです。
商品の中には「TEN to MARU」と日光彫職人のコラボ商品として、日光彫でクリスマスツリーがデザインされた御朱印帳もあり、とても素敵でした。
また、店主の渡辺さんは、お店を経営するだけでなく、全世界で展開されているプレゼンテーションイベント「PechaKucha Night(ペチャクチャナイト)」の日光版「PechaKuchaNight NIKKO」を2017年に立ち上げ、シティオーガナイザーとしても活動しています。
さらに、3児の母として子育てもしているという渡辺さん。
お話を聞きながら、そんな渡辺さんの行動力と実行力に刺激を受けたチームコンパスでした。
【TEN to MARU】
住所: 〒321-1432 栃木県日光市安川町4−23
TEL:080-1224-8630
https://www.facebook.com/tenmaru.nikko/
スポット③吉見屋(ギャラリー/雑貨屋/工房)
お次は、「TEN to MARU」からほど近い場所にある「吉見屋」さんへ。
福岡県出身の香川大介さんと、栃木県出身の奥さんの泰子さんの工房・ギャラリー・店舗を兼ねた住居は、
築100年の古民家をセルフリノベーションし、2017年にオープンしました。
ご主人の大介さんは、現在画家として活動中。鹿沼市にある日光珈琲朱雀店の壁に描かれた朱雀の絵も、大介さんが描かれたそうです。
また、奥さんの泰子さんは、主にお店の商品販売を担当しながら、ライティングのお仕事などもされています。
店内やギャラリーには香川さんの作品のほか、木工・陶器を中心とした作家さんこだわりの商品がずらり。
リノベーション前の古民家の写真も見せて頂きましたが、変わり様に一同びっくりでした。
「最初はすごくボロボロだった」というこの古民家。
大介さんは昔からモノを改造するのが好きだったこともあり、作る過程を楽しみながら、昔の建具を残しつつも、
引き続きコツコツと居心地の良い空間づくりをしています。
ここで、香川ご夫妻と同時に、「TEN to MARU」の渡辺さんも加わった3名のお話を伺いました。
お二方とも日光で自ら仕事を作っていることもあり、共通する部分も多々ありましたが、そこで印象に残ったところをいくつかご紹介しますね。
ひとつは、「自ら仕事を作る」ということ。
吉見屋の泰子さんは、会社勤務しか経験をしたことがなく、最初は「仕事を作る」という考え方すらなかったそうです。
しかし、そんな以前のスタイルが日光での暮らしに合わず、この地域に沿う暮らし方や働き方を模索する中でたどり着いたのが、現在の商品販売やライター業でした。
最初は不安でも、「まずははじめてみて、ダメだったら修正して、またやってみたらいい」を取り入れたのも大きかったと話していました。
売り方や仕入れの仕方も同様、わからないところがあったら、その場で周りの人に聞いて学びながらやっていく。
参加者の方々も、仕事を作るときの不安な感情に共感を抱きながらも、その壁の乗り越えたときの学びの多さには共感している様子でした。
2つめは、「日光ならではの暮らし」について。
日光というと観光地のイメージが強いですが、そこに暮らす人からはどう見えているのでしょうか?
まとめると、
・日光市は、全国で3番目に広い市町村ということもあり、エリアごとに色んな顔がある
・とにかく自然が雄大で癒やされる
・冬は寒いけど、雪景色がとても綺麗
・観光地の閑散期は「冬季休業」をするお店が多く、観光シ―ズンが忙しい分、ゆっくり自由な時間を過ごす人が多い
・地域に入り込むには、地域行事(お祭り)に参加すべし
などなど…
日光の新しい一面を知り、見方が変わったという参加者の方もちらほら。
移住者として日光の土地に暮らしているお三方だからこそのトークに、みなさんは興味深く耳を傾けている様子でした。
【吉見屋】
住所:〒321-1432 栃木県日光市 安川町5-19
TEL:0288−87−4032
日が暮れ始めたころ、チームコンパスが向かったのは、鹿沼市の「CICACU(シカク)」さん。
スポット④CICACU @鹿沼市
「CICACU」は、日光市と隣接する鹿沼市にあるゲストハウス。
閉館してしまった江戸時代創業の旅館を改装し、地元の人々と外からやってきた人が集まる鹿沼エリアのハブとなっている場所です。
ここでは鹿沼に移住した3人のゲストに、「鹿沼移住者のリアル」についてお話を聞きました!
トークゲストの皆さんはこちら。
(左から)
中尾 貞人さん
(フェアトレードショップ コブル 店主)
愛知県出身、移住3年目。14年勤めた会社を辞め、世界を一周して様々な問題を学んだのち鹿沼市へ。
「人を通して持続可能な地域社会を育む」ため、フェアトレードショップ、ひきこもり支援など多岐にわたり活動中。
小出 拓也さん
(工務店勤務 住宅・店舗の現場監督)
東京都出身、移住1年目。 建築や庭のことを学ぶため、素材と職人の町・鹿沼へ移住。 庭・畑・倉庫付きの空き家を借り、
家族のように面倒を見 てくれる、町の温かな人々に 支えられながら日々を暮らしている。
辻井 まゆ子さん
(ゲストハウスCICACU 女将)
京都府出身、移住5年目。日光への旅の途中、鹿沼に立ち寄り、街の人たちの魅力にひかれ移住。
ゲストハウスを開くため、鹿沼で日光珈琲を営む風間さんの元で働きながら物件を探し、2016年3月にCICACUをオープン。
鹿沼のいいところから、「ここだけ!」な苦労話まで赤裸々に語ってもらい、参加者のみなさんからも次々に質問が投げかけられていました。
内容はこんなかんじ!
Q.鹿沼に移住したきっかけは?
小出:大学で都市計画を学んでいくうちに、工務店で働きたいと思うように。
生まれ育った東京以外の場所に住んでみたいなと思っていた時期に知り合ったのが鹿沼の人だった。
その後、新卒採用で鹿沼の工務店の面接に何度か足を運んで、「ここに住んでみよう」と確信を持った。
中尾:もともとは愛知県で会社員をしたのちに、ピースボートで世界一周の旅を経験。
そのときに出会った友人が、現在所属している鹿沼のNPO法人の理事長と知り合いで、紹介してもらった。
会ってみたらその人が面白かったので、住み込みでアルバイトをすることに。
辻井:ゲストハウス「巣み家」に宿泊した際、「鹿沼が面白いよ」と言われたので遊びに来たら、地元の人にあちこち案内をしてもらい、気がつけば一日が終わっていた。
そのときに、日光珈琲の代表に会い、「鹿沼でゲストハウスをやれば?」という話に。
鹿沼に初めて来て、3日くらいで移住を決意した。
Q.ここで暮らしていて良かったことは?
小出:やりたいことを応援してくれる人が多い。少し相談しただけでも、周りがどんどん後押ししてくれる。
中尾:適度に田舎で、適度に便利な環境がある。でも結局は土地の縁より人の縁。
辻井:困ったらすぐに助けてもらえる。「あれが足りない」と相談すると、家電製品でもすぐに誰かが譲ってくれる。
Q.これからやってみたいことは?
小出:鹿沼を拠点として、地元の人に協力してもらいながらも、トラックに装備を施し「移動式の家」や「移動式の足湯」のプロジェクトをやりたい。
中尾:ライフワークとしている「持続可能な社会」を目指す活動について、地域の中でもっと話せる拠点を作りたい。
辻井:これからは女将業だけでなく、もうちょっと自由にあちこち動けるよう、「第二の辻井」を増やしたい。
三者三様の鹿沼での経験や想いに、時間が足りなくなるくらいの熱い座談会でした。
トークが終了したあとは、「CICACU」で用意してもらった山盛りの餃子で、今回のツアーの打ち上げパーティがスタート!
長いテーブルにさまざま料理が並び、「なんだかお盆や正月に実家に帰ったときみたいな気分!」との声があがっていました。
そんなアットホームな雰囲気の中、今回のコンパスツアーは一旦ここで終了です。
さてさて、締めに一発やっときますか!
\はい、コンパス♪/
番外編:地域行事「チャリ鍋」に参加
ツアー翌日は、希望者のみが参加できるオプションプログラムとして、「1日スタッフ体験」に挑戦しました。
みんなで神様にお参りしたあとは、
暖かくて具だくさんの豚汁を振る舞います♪
前日のツアーとはまた一味違い、地域の人たちに溶け込んでお手伝いをする貴重な経験ができたメンバーなのでした。